闇金に借用書を渡すのは危険!渡してしまったときの対処法も解説

グリフィン法務事務所

この記事の監修
グリフィン法務事務所 司法書士 今井 亨

東京司法書⼠会:7970/代理権認定番号:712017
闇金問題の被害者救済の専門家として活動する司法書士です。闇金トラブルの取扱い件数は国内トップクラスの実績があります。適切かつ迅速にサポートすることをモットーにしています。

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借金をするときには通常、借用書または契約書を作成する必要があります。

闇金からお金を借りるときには借用書などは不要なことが多いですが、悪質な目的をもって借用書へのサインを求められることもあるので注意が必要です。

この記事では、闇金が借用書を書かせる目的や、闇金に借用書を渡すとどのようなリスクが生じるのかについてご説明します。

借用書とは?契約書との違いは?

借用書とは、お金を借りる側が以下のことを記載して署名・押印し、貸す側へ提出する書面のことです。

  • いくら借りたのか
  • いつまでに返済するのか
  • 利息の利率
  • 遅延損害金の利率

契約書とは、お金の貸し借りに関する契約内容を記載し、借りる側と貸す側の双方が確認した上で署名・押印するものです。

一般的には個人間の借金では借用書が用いられることが多いですが、貸金業者との借金では契約書(金銭消費貸借契約書)が用いられます。

借用書と契約書には以上の違いがありますが、お金の貸し借りに関する証拠を残すという意味では同等の意味を持ちます。

借金について双方が合意した時点で「金銭消費貸借」が成立します。借用書も契約書も、金銭消費貸借が成立したことを証拠として残すために作成されるものです。

金銭消費貸借契約書のことを俗に借用書と呼ぶこともあります。

闇金からの借金で借用書は必要?

闇金からお金を借りるときに借用書が必要となることはほとんどありませんが、一部の業者は借用書へのサインを求めてくることもあります。

ほとんどの場合は不要

最近の闇金業者のほとんどは、電話やメール、LINEでのみ利用者とやりとりをします。契約から融資するお金の振り込み、返済の指示に至るまで、業者と利用者が対面することはありません。そのため、借用書を求められることはほとんどありません。

このような闇金業者は、むしろ借用書や契約書を作成することを嫌がります。なぜなら、法外な金利を伴う闇金との契約は違法であり、その証拠を残すと警察に逮捕されるおそれがあるからです。

ただし、非対面型の闇金業者も、融資前の審査と称して本人確認書類や給与明細などの書類を写メなどで送信することを要求してきます。こうすることによって、利用者の個人情報が収集されていることに注意が必要です。

対面型の闇金では必要なこともある

闇金にはさまざまな種類があり、一部には利用者と実際に会って契約をする「対面型」の闇金業者もいます。

対面型の闇金業者は、融資の際に借用書を求めてくることがあります。

ただし、契約書を作成するためには貸す側の本名や住所なども記載する必要があるため、対面型の闇金業者も契約書の作成は求めません。

あくまでも、利用者が一方的に作成する借用書を求めてくるのです。

対面型の闇金が借用書を書かせる目的

闇金からお金を借りてしまうと、借用書があってもなくても法外な利息を要求され、支払えなければ脅迫的な取り立てや悪質な嫌がらせが行われます。

それなのに対面型の闇金が利用者にあえて借用書を書かせる目的は、以下のとおりです。

利用者に返済の覚悟を持たせるため

ひとつ目の目的は、借用書を作成して利用者に署名・押印させることで、返済をしっかりと行う覚悟を持たせることが挙げられます。

厳重な手続きを踏むことで利用者に緊張感を与え、「返済が遅れると大変なことになる」という気持ちを抱かせることにより、確実にお金を払わせようとするのです。

返済を迫る口実を作るため

闇金からお金を借りても、実は法律上の返済義務はありません。闇金にとっては、この言い訳を回避するために借用書が便利な証拠となります。

「自分で借用書にサインして支払いを約束したのだから、約束どおりに支払え」と言って返済を迫ってくるのです。

多くの人は、法律上の返済義務がないという知識があったとしても、このように言われると「支払うしかない」と思ってしまうものです。

個人情報を収集するため

借用書の様式は業者によってさまざまですが、借主本人の住所・氏名・連絡先だけでなく、家族や親戚、友人・知人、勤務先の名称や連絡先などを記入させる欄が設けられているものが多いです。

闇金はこれらの個人情報を収集することによって、返済が遅れた場合には借主以外の第三者に対しても取り立てや嫌がらせを行い、お金を支払わせようという目的を持っています。

闇金に借用書を渡すことで生じるリスク

闇金に借用書を渡してしまうと、以下のように深刻な事態に追い込まれるおそれがあります。

返済条件を改ざんされる

借用書には契約で定めた返済条件が正確に記載されるはずですが、闇金の場合は借入額や金利を空欄にしたままサインを求めてくることがあります。

空欄がある借用書にサインをして闇金に提出すると、闇金が思いのままに空欄を補充して返済を迫ってくることになりかねません。

  • 5万円しか借りていないのに10万円の返済を要求された
  • 金利は年20%だと聞いていたのに10日で20%を要求された

このようなケースが少なくありません。

空欄がなかったとしても、闇金が勝手に返済条件を改ざんして返済を迫ってくることもあります。

法的措置をとられることもある

闇金が返済の請求をするために裁判を起こすことはありませんが、対面型の闇金が「公正証書」を作成して利用者の財産を差し押さえてくることはあり得ます。

対面型の闇金からお金を借りる際には、借用書の他にもさまざまな書類に署名・押印をさせられ、印鑑証明書の提出を求められることもあります。

その中に公正証書を作成するための白紙委任状が入っていると、勝手に公正証書を作成される可能性があるのです。

公正証書があると、そこに記載されたとおりの条件でお金を支払わなければ、債権者が裁判所に申し立てることにより財産を差し押さえられてしまいます。

個人情報を悪用される

闇金への返済が遅れた場合には、以下のように個人情報を悪用されてしまいます。

  • 家族や親戚などにも取り立てが及ぶ
  • 勤務先や友人、知人にまで嫌がらせが行われる
  • ネットで個人情報を拡散される

いずれも、利用者を精神的に追い込んでお金を支払わせようとする闇金の手口です。

その他にも、個人情報を悪質業者に売却され、他の闇金から勧誘を受けたり、詐欺の被害にあってしまうおそれもあります。

借用書があっても闇金への返済は不要

闇金からお金を借りても、返済する必要はありません。

なぜなら、法外な金利を伴う金銭消費貸借契約は出資法に違反する犯罪行為であり、民事でも公序良俗違反として無効だからです。

このような違法行為の一環として渡されたお金は「不法原因給付」に該当するため、闇金には法律上の返還請求権が認められません。その結果、借りた側は闇金から振り込まれたお金を返還する必要はないのです。

この点は、借用書があってもなくても同じことです。たとえ「必ず返済します」という借用書を差し入れていたとしても、契約が公序良俗違反で無効なのですから、借用書にサインしたからといって返済義務が発生することはありません。

闇金に借用書を渡してしまったときの対処法

闇金に借用書を渡してしまったとしても、まずは返済を拒否することが大切です。「約束した以上は支払え」と言われても、不法原因給付を理由として拒否することができます。

少しでも返済すると闇金から「カモ」と認定され、次々に返済を要求されますので、ご注意ください。

ただし、返済を拒否するだけでは取り立てや嫌がらせ行為が止まりませんので、専門家のサポートを受けて対処する必要があります。

取り立てや嫌がらせ行為で身の危険を感じるときは、警察に相談しましょう。警察が介入することで闇金が大人しくなることも期待できます。

とはいえ、実害が生じていなければ警察は本格的に動いてくれません。そのため、闇金問題を根本的に解決するためには、司法書士や弁護士に対応を依頼することが最善の対処法となります。

司法書士・弁護士が闇金に警告を出して交渉したり、闇金の口座の凍結や携帯電話の利用停止などの手続きをとることによって、闇金からの請求は止まります。

まとめ

闇金に借用書を提出してしまったとしても、その借用書に法的な効力はありません。したがって、借用書があってもなくても、闇金問題を解決するための対処法は同じです。

闇金に手を出してしまったら、司法書士・弁護士に相談して適切な方法で解決しましょう。ただ、すべての司法書士・弁護士が闇金問題に詳しいわけではないので、闇金問題解決の実績が豊富な事務所を選んで相談することをおすすめします。