給料ファクタリングは闇金!利用してはいけない理由と被害を受けたときの対処法

給料ファクタリングは闇金!利用してはいけない理由と被害を受けたときの対処法
グリフィン法務事務所

この記事の監修
グリフィン法務事務所 司法書士 今井 亨

東京司法書⼠会:7970/代理権認定番号:712017
闇金問題の被害者救済の専門家として活動する司法書士です。闇金トラブルの取扱い件数は国内トップクラスの実績があります。適切かつ迅速にサポートすることをモットーにしています。

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給料の前借りのような感覚で現金を調達できる手段として「給料ファクタリング」というものがあります。業者が「借金ではないので安心」と謳っていることもあり、闇金の恐ろしさを知っている人でも給料ファクタリングに手を出してしまう人が少なくないようです。

しかし、給料ファクタリングの実態は法外な手数料を徴収する闇金です。決して手を出してはいけません。

この記事では、給料ファクタリングの手口や利用してはいけない理由、被害を受けたときの対処法についてご説明します。

給料ファクタリングとは

給料ファクタリングとは、勤務先の会社から給料を受け取れる権利を債権として業者に買い取ってもらうことにより、早期に現金化できるサービスのことです。

利用者は会社に知られることなく、給料の前借りのような感覚で手軽に現金を受け取ることができます。

債権譲渡の形を取るため借金とは異なり審査不要で、金融ブラックの人でも利用できるため、正規の貸金業者から借りられなくなった人が数多く利用しています。

給料ファクタリングの仕組み

給料ファクタリングがどのような仕組みで行われているのかについて、ご説明します。

本来の「ファクタリング」の仕組み

そもそもファクタリングとは、企業の顧客や取引先に対する売掛金を債権としてファクタリング業者に譲渡することにより資金を調達するサービスのことです。その仕組みは以下のとおりです。

  1. 利用者が売掛先に請求書を発行する(売掛債権の発生)
  2. 利用者がファクタリング業者へ売掛債権を売却する
  3. ファクタリング業者から利用者へ債権額から手数料を差し引いた金額が支払われる
  4. ファクタリング業者が売掛先へ債権譲渡を受けた旨を通知する
  5. ファクタリング業者が売掛先から債権額を回収する

これを「3社間ファクタリング」といいますが、売掛先とのやりとり(上記4・5番)を省略した「2社間ファクタリング」もあります。その場合は売掛先への債権譲渡通知は行われず、利用者は売掛先から債権額を回収した上で、その全額をファクタリング業者へ返済することになります。

本来のファクタリングは、主に中小企業の間で合法的な資金調達手段として広まっています。

実際に行われている給料ファクタリングの仕組み

このファクタリングの仕組みを個人が勤務先に対して有する給料債権に当てはめたものが給料ファクタリングです。

実際に行われている給料ファクタリングは、勤務先とのやりとりを省略した「2者間ファクタリング」となっています。

  1. 利用者が業者に給料債権を売却する
  2. 業者から利用者へ給料から手数料を差し引いた金額が支払われる
  3. 給料日に利用者が勤務先から給料を受け取る
  4. 利用者が業者へ給料全額を返済する

業者にとっては「手数料」が利益となります。一方、利用者としては手数料に相当する金額をどこかから調達して返済する必要があります。

給料ファクタリングは違法?

給料ファクタリングは、いっけん便利なサービスのように思えますが、実は違法です。その理由をご説明します。

給料債権の譲渡には法律上の問題がある

労働基準法で「労働者の給料債権を譲り受けた者がその労働者の雇い主に支払いを求めることは許されない」とされているため、ファクタリング業者が給料債権を譲り受けて雇い主から給料を回収することはできません。

賃金債権については、労働基準法第24条第1項において「通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない」とされているところ、最高裁判所昭和43年3月12日判決によると、労働者が賃金債権を他に譲渡した場合においても、使用者は直接当該労働者に支払わなければならず、譲受人は自ら使用者に対してその支払いを求めることは許されないと考えられている。

【引用】金融庁

給料ファクタリングは利用者と業者との「2者間」でのみ行われているのですが、これは労働基準法に違反する行為を会社に知られないための手口であると見るべきです。

実質的には「貸付」に当たる

そう考えると、給料ファクタリングは「債権譲渡」というよりも、実質的には給料日を返済日とする「貸付」に当たるといえます。

裁判所や金融庁も給料ファクタリングは貸付だという見解を示しているので、実際に行われている給料ファクタリングは「貸付」として捉えるべきです。

裁判例においても、
〇 ファクタリング業者が債権回収のリスクをほとんど負っていない
〇 債権の額面と無関係に金員の授受がなされていた
〇 売主は、買戻しを行わざるを得ない立場にあった
〇 債権が回収不能となった場合には代金を減額されるなど、債権の回収リスクが売主の信用リスクと同じとなっている

といった事情等を考慮して、金銭の授受が金銭消費貸借契約に準じるものと判断されたものがあります(大阪地方裁判所平成29年3月3日判決)。

【引用】金融庁

無登録業者の営業は違法

給料ファクタリングが貸付に当たる以上、これを反復継続して行う業者は、国(財務局長)または都道府県知事に貸金業者としての登録を行っていなければなりません。

第三条 貸金業を営もうとする者は、二以上の都道府県の区域内に営業所又は事務所を設置してその事業を営もうとする場合にあつては内閣総理大臣の、一の都道府県の区域内にのみ営業所又は事務所を設置してその事業を営もうとする場合にあつては当該営業所又は事務所の所在地を管轄する都道府県知事の登録を受けなければならない。

【引用】貸金業法

しかし、給料ファクタリング業者のほとんどは無登録で営業を行っています。この点で給料ファクタリングは違法ということになります。

貸金業者としての登録をしている給料ファクタリング業者がいたとしても、次にご説明する金利の問題があります。

高額の手数料を要求される場合も違法

給料ファクタリングが貸付だとすると、業者が徴収する手数料は「利息」に当たります。

給料ファクタリング業者が徴収する手数料は給料額の5%~20%程度が平均的ですが、返済期日は次の給料日、つまり1ヶ月後ですから年利に換算すると、60%~240%となるため違法な金利です。

出資法では、貸付における上限金利を定めており、これを超えた場合には刑事罰も用意されています。

  • 金融業者による貸付:年利20%まで
  • 非金融業者による貸付:年利109.5%まで

東京地裁令和2年3月24日判決の事例では、年利1,000%を超える暴利で手数料が徴収されていました。

このように高額の手数料を要求する給料ファクタリングは、明らかに違法です。

給料ファクタリング業者の手口

次に、給料ファクタリング業者はどのようにして顧客を集め、暴利を得ているのか、その手口をご紹介します。業者の手口を知り、手を出さないように注意しましょう。

ブラックOK、審査不要などの誘い文句で勧誘する

給料ファクタリング業者は、自社の提供するサービスがあくまでも債権買取であり、借金ではないことを強調します。

そしてホームページや広告などで「ブラックの方もOK」「審査不要」「お勤めの方であれば誰でも利用可能」「最短即日に現金を調達」と勧誘してきます。

金融ブラックや総量規制のために正規の金融業者から借りられなくなった人が見れば、渡りに船のようなサービスに見えてしまうことでしょう。

担保や保証人不要、会社にバレないなどの誘い文句も

お金に困った人の中には担保や保証人を用意できない人が多いものです。給料ファクタリングを利用したことが会社に知られると困ると考えるのも当然のことでしょう。

給料ファクタリングは、これらの心配は一切不要と謳って勧誘してきます。一見すると親身なサービスのように思えますが、ソフト闇金が顧客を安心させてお金を借りさせる手口と同じです。

法外な手数料を要求する

先ほどもご説明したように、給料ファクタリング業者は法外な手数料を要求してきます。

給料額の5%~20%というと良心的な設定のように思えるかもしれませんが、年利に換算すると暴利となっていることに注意が必要です。

契約時に個人情報を細かく聞き出す

契約の際には、勤務先会社の名称、所在地、連絡先などはもちろんのこと、家族構成から親戚・友人の連絡先まで聞き出されることがあります。

給料ファクタリング業者は利用者が完済することは難しいと分かっているので、後で取り立てを行うために細かな個人情報を聞き出すのです。これは闇金と同じ手口です。

返済できなければ再契約を持ちかける

利用者の多くは給料日に給料全額を返済に充てると生活費がなくなってしまいます。

このような事情で返済が難しい場合、給料ファクタリング業者は再契約を持ちかけてきます。その際には、当然ながら新たに手数料が差し引かれます。

この手口は、闇金が返済できない顧客に利息だけを支払わせ、ジャンプさせる手口と似ています。

再契約もできなくなれば悪質な取り立てを受ける

再契約を繰り返していると手数料の負担が重なっていき、やがて再契約もできなくなります。そうなれば、給料ファクタリング業者は闇金と同様の悪質な取り立てを行ってきます。

利用者本人が脅迫的な取り立てを受けるだけでなく、勤務先や家族、親族、友人・知人までもが嫌がらせの対象となります。

給料ファクタリングは闇金!利用してはいけない

給料ファクタリング業者の中に違法業者がいるというよりは、闇金業者が合法的なサービスを装って給料ファクタリングを提供しているというのが実態です。

給料債権の譲渡には労働基準法との関係で問題があるため、正規の金融業者は給料ファクタリングを行っていません。給料ファクタリング業者は闇金であると考えて差し支えありません。

金融庁も、貸金業登録を受けずに給料ファクタリングを営む者は違法な闇金業者であるとして、国民に対して注意を呼びかけています。

給料ファクタリングに手を出すと生活が破綻するおそれがあるので、決して利用しないようにしましょう。

【参考】:給与の買取りをうたった違法なヤミ金融にご注意ください!|金融庁

給料ファクタリングを利用してしまったときの対処法

もし、給料ファクタリングを利用してしまったときは、以下のように対処しましょう。

返済はしなくてよい

貸金業法では、年利109.5%を超える金利による貸付の契約は無効であるとされています。
給料ファクタリングが実質的に貸付に当たる以上、手数料の割合によっては契約自体が無効となります。

そして、裁判例(東京地裁令和2年3月24日判決)では、出資法の上限利率(年利109.5%)を大きく超える手数料の受け渡しは民法上の「不法原因給付」(民法第708条)に当たり、業者は利用者に対して返還を請求できないとされています。

つまり、給料ファクタリング業者から受け取ったお金は、手数料の割合にもよりますが、法律上の返済義務がない可能性が高いのです。

悪質な取り立ての被害を受けたときは警察に相談

脅迫的な取り立てや執拗な嫌がらせ行為を受けている場合は、警察に相談しましょう。警察も闇金業者の摘発には比較的力を入れているので、悪質なケースには対応してもらえるでしょう。

給料ファクタリング業者も、自社の行為が違法であることを知っています。警察に見つかると逮捕されて処罰を受け、犯罪収益を没収されることも知っています。そのため、警察が介入すると悪質な取り立てが止まる可能性が高いです。

司法書士・弁護士に依頼して根本的な解決を

給料ファクタリング業者とのトラブルを根本的に解決するためには、司法書士・弁護士といった法律の専門家に依頼することをおすすめします。

警察は必ずしも動いてくれるとは限りませんが、専門家は依頼者を守るためにすぐ動いてくれます。

業者も、司法書士・弁護士から警告を受けると、その利用者からそれ以上のお金を回収するのは困難であることが分かっていますので、通常はもう連絡してこなくなります。

まとめ

給料ファクタリングは便利なサービスのようにも思えますが、実態は闇金の一種です。決して手を出してはいけません。

もし、給料ファクタリングを利用してしまったときは、闇金に強いグリフィン法務事務所に相談して関係を絶ちませんか。