個人間融資は違法?借りてはいけない理由と借りてしまったときの対処法

グリフィン法務事務所

この記事の監修
グリフィン法務事務所 司法書士 今井 亨

東京司法書⼠会:7970/代理権認定番号:712017
闇金問題の被害者救済の専門家として活動する司法書士です。闇金トラブルの取扱い件数は国内トップクラスの実績があります。適切かつ迅速にサポートすることをモットーにしています。

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近年、インターネット上の掲示板やSNSにおいて個人間でお金の貸し借りをする人が急増しています。このような「個人間融資」は一見すると合理的なやりとりのようにも思えますが、実態は闇金が一般の個人を装っていることが多く、トラブルも多発しています。

この記事では、個人間融資が違法である理由とともに、借りてはいけない理由、借りてしまったときの対処法についてご説明します。

個人間融資とは

個人間融資とは、貸金業者ではない個人とお金に困っている個人との間でお金の貸し借りをすることです。インターネットが普及した昨今では、掲示板やSNSを通して知り合った人同士でお金の貸し借りが行われています。

ブラックで貸金業者から借りられなくなった人に対して、経済的に余裕のある個人が善意でお金を貸すのであれば、特に問題はないのかもしれません。

しかし、実際には闇金や悪意を持った個人が「善意の個人」を装い、インターネット上で個人間融資を持ちかけていることがほとんどであり、借り手がさまざまな被害にあうケースが多発しているのです。

個人間融資は違法!その理由とは

現在、インターネットを介して行われている個人間融資のほとんどは違法ですので、利用してはいけません。

ここでは、個人間融資が違法である理由をご説明します。

無登録で営業しているから

掲示板やSNSで個人間融資を持ちかけてくる人は、さまざまな借り手に対して繰り返し融資を行っています。

個人であっても、このように反復継続してお金を貸し付けることは「貸金業」に該当するため、国または地方自治体に貸金業者として登録しなければなりません。

しかし、個人間融資を持ちかけてくる人は貸金業の登録などしていません。したがって、個人間融資は無登録営業として貸金業法に違反する行為です。

法外な利息を要求してくるから

個人間のお金の貸し借りであっても、利息を伴う場合には「利息制限法」が適用されます。

個人間融資ではほとんどの場合、利息制限法の上限金利をはるかに上回る暴利で計算した法外な利息を要求されます。したがって、個人間融資は利息制限法に違反する違法行為です。

悪質な取り立てを行うから

借り手が返済できなければ、貸し手から取り立てを受けるのは当然のことです。しかしながら、取り立てにおけるルールも貸金業法で定められています。

個人間融資の貸し手は、貸金業法上のルールを無視した悪質な取り立てを行ってきます。この点でも、個人間融資は貸金業法に違反する違法行為であるといえます。

まとめますと、個人間融資ではお金の貸し借りにおいて守らなければならない法律上のルールを一切無視して悪質な行為が行われているため、違法といえるのです。

個人間融資は犯罪!違法行為の実態とは

個人間融資は単に違法であるだけでなく、犯罪に該当する悪質な行為です。借り手が罪に問われることはありませんが、重大な被害に遭うおそれが強いので、決して利用しないようにしましょう。

ここでは、違法行為の実態とともに、どのような犯罪に該当するのかをみていきましょう。

貸金業法違反

個人間融資の貸し手は、インターネット上の専用掲示板やTwitterなどのSNSに「審査不要」「即日融資」「ブラックの方もOK」などと書き込み、借り手を募集します。

貸金業の無登録営業が違法となることは先ほどもご説明しましたが、無登録業者がこのような広告や勧誘を行うだけでも貸金業法違反の罪となります。

無登録営業については「10年以下の懲役もしくは3,000万円以下の罰金、またはその両方」。無登録業者の広告・勧誘については「2年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、またはその両方」が科せられます。(貸金業法 第47条)

詐欺罪

個人間融資の勧誘をする書き込みを見て融資を申し込むと、先に手数料などの名目でお金を求められ、振り込むと連絡が取れなくなり、お金を騙し取られるケースもあります。

このような行為は刑法上の詐欺罪に該当し、「10年以下の懲役」が科せられます。(刑法 第246条)

出資法違反

個人間融資では、闇金と同様にトサン(10日で3割)、トゴ(10日で5割)といった法外な金利で利息を要求されることがほとんどです。

しかし、個人間のお金の貸し借りにおいて年利109.5%を超える金利で利息を要求する行為は出資法違反です。トサンは年利1,095%、トゴは年利1,825%ですので、年利109.5%をはるかに超えています。

出資法違反の罪に対しては「5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、またはその両方」が科せられます。(出資法 第5条)

脅迫罪

借りたお金を返せなければ取り立てを受けますが、個人間融資の貸し手からは「返さなければ家に火をつけるぞ」「家族がどうなっても知らないぞ」「どこまでも追い込むからな」などと脅されることがよくあります。

たとえ正当な返済請求権があったとしても、このように借り手を脅せば刑法上の脅迫罪に該当する可能性があります。脅迫罪に対しては、「2年以下の懲役または30万円以下の罰金」が科せられます。(刑法 第222条)

恐喝罪

貸し手からの脅迫に恐れをなした借り手がお金を支払うと、貸し手に刑法上の恐喝罪が成立する可能性があります。

恐喝罪に対しては「10年以下の懲役」が科せられます。(刑法 第249条)

個人間融資は危険!利用してはいけないその他の理由

個人間融資の違法性や悪質さについてご理解いただけと思いますが、その他にも、個人間融資を利用すると以下のように危険な目にあうケースが少なくありません。絶対に利用しないようにしましょう。

個人情報を悪用される

個人間融資では闇金と同様、融資を申し込んだ際に審査などと称して、身分証明書のコピーの他、勤務先や家族、親戚、友人・知人など、さまざまな個人情報の提供を求められます。

これらの個人情報は名簿業者に売り渡され、悪質業者の間に流出する可能性が高いです。その結果、闇金や詐欺業者から勧誘のダイレクトメールが頻繁に届くケースがよくあります。

また、返済できない場合にはインターネット上に個人情報を晒されるといった嫌がらせを受けることも少なくありません。

性的被害に遭う

女性が個人間融資を利用した場合には、返済できなくなると「体で利息を支払え」などと脅され、性行為を強要されるおそれがあります。

また、融資の条件として体の関係を求められたり、担保と称して裸の写真の送信を要求されることもあります。

個人間融資を装って女性にターゲットを絞り、金銭だけでなく性的な要求もしてくる手口のことを「ひととき融資」といいますが、女性の場合はひととき融資による被害にも注意が必要です。

犯罪行為への加担を強要される

男女問わず、個人間融資で返済できなくなった場合には、犯罪行為への加担を強要されることがあります。貸し手の利益となるような犯罪を行うことと引き換えに、借金を帳消しにすると持ちかけられるのです。

よくあるケースは、銀行口座や携帯電話の譲渡を求められるというものです。

違法業者は、自己名義の銀行口座や携帯電話を営業に使用すると警察に発覚しやすくなるため、第三者名義のものを使用するのが常套手段です。そこで、返済できなくなった借り手に対して、銀行口座や携帯電話の提供を求めてくるのです。

また、振り込め詐欺や給付金詐欺といった特殊詐欺の受け子・出し子などの実行を強要されることもあります。

以上の行為はいずれも犯罪であり、応じると借り手が罪に問われてしまいます。特に、特殊詐欺に関わると初犯でも実刑判決を受け、刑務所に収容されてしまうケースが少なくないので、十分に注意が必要です。

違法な個人間融資を利用してしまったときの対処法

もし、違法な個人間融資を利用してしまったときは、被害を最小限に食い止めなければなりません。そのためには、以下のように対処していきましょう。

返済をしてはいけない

借入条件にもよりますが、個人間融資ではほとんどの場合、返済義務がありません。

年利109.5%を超える金利を伴う貸付は犯罪ですので、契約そのものが無効です。そして、貸し手が借り手に交付したお金は「不法原因給付」に該当するため、貸し手には法律上の返済請求権が認められないのです。

個人間融資を装った闇金はこのことを承知の上で、脅迫的な取り立てや嫌がらせにより借り手を追い込み、お金をむしり取ろうとします。そんな闇金に対して真面目に返済をすると「カモ」と判断され、次々に法外な利息を要求されます。

闇金など違法業者と手を切るためには、「返済しない」と決意することが大切です。

身の危険を感じるときは警察に相談

ただ、単に不払いとするだけでは、当然のことながら厳しい取り立てを受けてしまいます。そのため、事態を収めるためには、しかるべき第三者のサポートが必要となってきます。

脅迫的な取り立てや悪質な嫌がらせを受けている場合など、身の危険を感じるときは警察に相談することが有効です。

被害届を提出して警察が介入すると、貸し手が手を引いて取り立てが止まることもあります。

取り立てを止めるためには司法書士・弁護士に相談

実際には、被害届を提出したとしても警察がすぐに動いてくれないことも少なくありません。実害が生じていない場合には、「民事の問題だ」として取り合ってもらえないこともあります。

そんなときには、法律の専門家である弁護士または司法書士に相談しましょう。司法書士・弁護士は、依頼を受ければすぐに個人間融資の貸し手に連絡をとって交渉します。

闇金などの違法業者は、司法書士・弁護士が介入した借り手からお金を回収するのが困難であることを知っています。何よりも、刑事告訴や民事裁判などの法的措置をとられることを恐れています。

そのため、弁護士または司法書士に依頼すれば早期に取り立てが止まることがほとんどです。

借金の返済に困っているなら債務整理が有効

個人間融資に手を出す人のほとんどは、多額の借金を抱えていて返済に窮しています。正規の貸金業者からの借金問題は、債務整理で解決することが可能です。

債務整理には主に任意整理・個人再生・自己破産という3種類の手続きがあります。それぞれ特徴の異なる手続きですが、債務総額や収入・資産の状況、生活状況などに応じて適切な手続きを選択すれば、必ず借金問題は解決できます。

適切な手続きを選ぶためには専門的な法律の知識も必要となりますので、弁護士または司法書士に相談することをおすすめします。

個人間融資に手を出す前に司法書士・弁護士に相談し、借金問題を解決してしまいましょう。