- ひととき融資は闇金と同じ違法行為である
- ひととき融資に関わると裸の写真をばらまくと脅され、法外な利息を要求される
- ひととき融資の契約は無効であり、返済義務はない
- ひととき融資のトラブルや借金問題は弁護士・司法書士への依頼で解決できる
最近、個人間融資において「ひととき融資」の被害に遭う女性が急増しています。
ひととき融資は、お金に困った女性を狙って融資の見返りとして性交渉を要求するとともに、法外な利息も要求するという卑劣で悪質な違法行為です。
この記事では、ひととき融資に関わってはいけない理由と、もし関わってしまったときに被害を最小限に抑えて解決する方法をご説明します。
ひととき融資とは
ひととき融資とは、主にインターネット上で知り合った人同士の間でお金の貸し借りをする「個人間融資」のうち、融資の見返りとして性交渉を要求される手口のことをいいます。
融資、あるいは返済のプロセスにおいて、貸し手と体の関係を伴う「ひととき」を過ごさなければならないことから「ひととき融資」と呼ばれています。
一般の男性がインターネット上でひととき融資の勧誘をすることが多いですが、闇金業者が個人間融資を装ってひととき融資を持ちかけてくるケースもあります。
すぐにでもお金が必要な女性の中には、「闇金とは違って怖くなさそう」と思って融資を申し込み、性交渉を要求されると「他に借りるあてもないから仕方ない…」と考えて応じてしまう被害があとを絶ちません。
ひととき融資の勧誘手口
ひととき融資は、以下の手口で勧誘してきます。知らずに手を出してしまわないよう、しっかりと確認しておきましょう。
ネット上で融資を提案する
ひととき融資は、主にインターネット上の掲示板サイトや、TwitterなどのSNSに「困っている人の力になります」などと投稿し、融資を提案します。
その投稿において、堂々とひととき融資の勧誘であることを明示しているものもあります。その一方で、以下のような隠語を使って暗にひととき融資の募集をしていることもあります。
「アダルトできる人のみ」
「大人できることが条件です」
「女性限定」と断り、「30代まで」などと年齢制限を設けている投稿も、ひととき融資である可能性が非常に高いです。
また、純粋な個人間融資を装った投稿をして、後でひととき融資を提案してくるというケースもあるので注意が必要です。
顔写真や身分証明書の画像を送信させる
お金に困った女性が投稿主にメッセージを送信すると、融資の金額や条件についてのやりとりが始まります。
その際、貸す側の男性は必ずといってよいほど、本人確認や審査などと称して顔写真や身分証明書の画像を送信するように求めてきます。
しかし、実際にはこれらの画像は借りる側の女性が性交渉に応じない場合や返済が遅れた場合に「画像をばらまくぞ」と脅すための材料にするために要求しているのです。
裸の写真を要求することもある
中には融資前に顔写真や身分証明書だけでなく、裸の写真を送信するように要求してくることもあります。これも、借りる側の女性を脅すための材料にするためです。
「きちんと返済してくれれば、写真をばらまくことはありません」
「完済すれば、こちらで責任をもって画像を消去します」
貸す側の男性は、このような台詞で女性を安心させて送信を求めます。借りる側の女性はお金に困っているあまりに「約束を守ってくれるのなら…」と考えて送信してしまいます。
融資の条件として体の関係を迫ることもある
貸す側の男性が体の関係を迫ってくるタイミングは、ケースバイケースです。返済が遅れたときに初めて性交渉を要求してくるケースもあれば、融資の条件として最初に性交渉を要求してくるケースもあります。
どちらにしても、体の関係を迫られる前に女性側は既に顔写真や身分証明書の画像を送信してしまっており、事実上、断れない状況に陥っています。
ひととき融資による被害の実態
ひととき融資でお金を借りてしまうと、以下のような被害に遭ってしまう可能性が非常に高いです。
法外な利息を要求される
ひととき融資でも、闇金と同様に法外な利息を要求されます。
体の関係に応じれば利息を軽減してくれることも少なくありませんが、それでも利息制限法で定められている上限金利をはるかに超える金利で利息を要求されることが一般的です。
返済できなければ体の関係を迫られる
法外な利息を支払えなければ、体の関係を迫られてしまいます。「1回付き合えば、今回の利息は免除してやる」と提案されることも多いです。
利息を支払うか性交渉に応じるかの二者択一となりますが、個人間融資を利用するほどお金に困っているのですから、法外な利息など支払えないことがほとんどで、やむを得ず性交渉に応じてしまう女性が多いのが実情です。
拒否すれば顔写真や裸の写真をばらまくと脅される
利息も支払えず性交渉も拒否すれば、身分証明書や裸の写真をネットにばらまくと脅されます。
通常、融資の際に家族や友人・知人、職場の人たちのメールアドレスやLINEのIDなども聞き出されているため、無視していると最も見られたくない人たちに裸の写真などが晒されてしまいます。
このようにして、借りた側の女性が性交渉に応じざるを得ないように仕向けるのが、ひととき融資の手口です。
応じれば性行為を撮影される
性交渉に応じる女性は「1度だけ我慢すれば済む」と考えるものですが、そういうわけにもいかないことが多いのが実情です。
貸した側の男性は、性交渉の際に女性の裸や性行為の模様を画像や動画に撮影してくることがほとんどです。もちろん、この画像や動画はさらなる脅迫の材料として使われることになります。
継続的に体の関係を迫られることも多い
ひととき融資が体の関係を伴うものであることを知っていても、「1度我慢するだけでお金を借りられるのなら構わない」と考え、手を出してしまう女性も少なくないようです。
しかし、体の関係は1度で済まない場合が多いということを知っておかなければなりません。
例えば、5万円を借りて利息込みで毎月1万円ずつを10回支払う場合、完済するまで体の関係を継続することを融資の条件とされるようなケースが多々あります。
悪質なケースでは、完済後にまで関係の継続を要求してきて、「応じなければ裸の写真をばらまく」と脅迫されることもあるので注意が必要です。
ひととき融資は違法!返済義務もない
法的観点からいうと、ひととき融資の契約は違法であり、無効です。そのため返済義務はありませんし、性交渉に応じる義務がないのはもちろんのことです。
以下で、具体的にご説明します。
無登録営業なので違法
貸金業を営む者は、財務局長または都道府県知事に申請して貸金業者として登録を受けなければなりません。
ひととき融資を行っているのは主に一般の男性や闇金業者ですが、いずれも貸金業登録などしていません。
個人であっても金銭の貸し付けを繰り返し行うことは「貸金業」に該当するため、貸金業登録を受けていなければ無登録営業となり、貸金業法違反となります。
個人であっても、反復継続する意思をもって金銭の貸付けを行うことは、貸金業法上の「貸金業」に該当します。
(注)貸金業を営む場合は、国又は都道府県の登録を受ける必要があります。【引用】金融庁
法外な利息の要求も違法
一般の男性が行うひととき融資でも、闇金と同様に年数百%から千%を超えるような法外な利息を伴うことが一般的です。
借金の上限金利は利息制限法で次のように定められており、この規制は個人間での借金にも適用されます。
- 元金10万円未満の場合…年20%
- 元金10万円以上100万円未満の場合…年18%
- 元金100万円以上の場合…年15%
この上限金利を超えた部分については、利息制限法により契約無効となります。
貸金業者は、利息制限法に基づき貸付け額に応じて15%~20%の上限金利で貸付けを行わなければならず、利息制限法の上限金利を超える金利は超過部分が無効・行政処分の対象、また、出資法の上限金利(20%)を超える金利は、刑事罰の対象となっています。
【引用】日本貸金業協会
契約は公序良俗違反で無効
「体の関係と引き換えにお金を貸す」などという契約は、明らかに公序良俗に反するものです。公序良俗違反の契約は、民法により全体が無効となります。
つまり、ひととき融資の契約は上限金利以内の部分も含めて全体的に無効ということです。したがって、返済義務はありませんし、体の関係を結ぶ義務も発生していません。
ひととき融資は犯罪!罪名と刑罰は?
前項では民事上の法律関係をご説明しましたが、ひととき融資は刑事上も犯罪に該当する悪質な違法行為です。
犯罪行為に屈しないよう、ここでは、ひととき融資で貸した側に成立しうる犯罪名と刑罰をご紹介します。
貸金業法違反の罪
先ほどもご説明したとおり、ひととき融資では無登録営業が行われています。無登録営業は、貸金業法で犯罪とされています。
ひととき融資の相手方が他の人にもお金を貸していたり、1人にしか貸していなくても繰り返し貸している場合には貸金業法違反(無登録営業)の罪が成立します。
刑罰は、「10年以下の懲役もしくは3,000万円以下の罰金、またはその両方」です。
第四十七条 次の各号のいずれかに該当する者は、十年以下の懲役若しくは三千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
二 第十一条第一項の規定に違反した者
【引用】貸金業法
※ 「第十一条第一項」とは無登録営業の禁止のこと。
出資法違反の罪
出資法という法律で、個人間のお金の貸し借りでも年109.5%を超える金利の約束をすると、貸す側に犯罪が成立するとされています。
ひととき融資では多くの場合、年109.5%を超える金利で計算した利息を要求されるものです。その場合には、貸した側に出資法違反の罪が成立します。
刑罰は、「5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、またはその両方」です。
第五条 金銭の貸付けを行う者が、年百九・五パーセント(二月二十九日を含む一年については年百九・八パーセントとし、一日当たりについては〇・三パーセントとする。)を超える割合による利息(債務の不履行について予定される賠償額を含む。以下同じ。)の契約をしたときは、五年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。当該割合を超える割合による利息を受領し、又はその支払を要求した者も、同様とする。
脅迫罪・暴行罪
貸した側の男性が借りた側の女性に対して「裸の写真をばらまくぞ」と脅す行為は、脅迫罪に該当します。
また、実際に会ったところで女性の気が変わって性交渉を拒否した場合、男性が女性の腕をつかんで引っ張ったりすると暴行罪が成立します。
刑罰は、脅迫罪が「2年以下の懲役または30万円以下の罰金」、暴行罪が「2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料」です。
(脅迫)
第二百二十二条 生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。(暴行)
第二百八条 暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、二年以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。【引用】刑法
強制わいせつ罪・強制性交等罪
ひととき融資の契約には体の関係を持つことが含まれますが、この契約が無効であることは先ほどご説明しました。
借りた側の女性が拒否するにもかかわらず、貸した側の男性が暴行や脅迫を加えて無理やり服を脱がせたり、体を触ったりした場合は強制わいせつ罪が成立します。そのような状態で性交渉やそれに近い行為にまで及んだ場合には、強制性交等罪が成立します。
刑罰は、強制わいせつ罪が「6ヶ月以上10年以下の懲役」、強制性交等罪が「5年以上の懲役(最長で20年)」です。
(強制わいせつ)
第百七十六条 十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、六月以上十年以下の懲役に処する。十三歳未満の者に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。(強制性交等)
第百七十七条 十三歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交(以下「性交等」という。)をした者は、強制性交等の罪とし、五年以上の有期懲役に処する。十三歳未満の者に対し、性交等をした者も、同様とする。【引用】刑法
名誉毀損罪
裸の写真など性的な画像や動画を個人の特定が可能な状態でインターネット上に公開された場合、被写体となった人の社会的評価が害されるおそれがあるので、相手に名誉毀損罪が成立する可能性があります。
刑罰は「3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金」です。
(名誉毀損)
第二百三十条 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。【引用】刑法
ストーカー規制法違反の罪
貸した側の男性が継続的な体の関係を求めて借りた側の女性につきまとうような行為をした場合は、ストーカー規制法違反の罪が成立する可能性があります。
刑罰は、基本的には「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」ですが、公安委員会が発出した禁止命令に違反してつきまとい行為をした場合は「2年以下の懲役または200万円以下の罰金」となります。
第十八条 ストーカー行為をした者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
第十九条 禁止命令等(第五条第一項第一号に係るものに限る。以下同じ。)に違反してストーカー行為をした者は、二年以下の懲役又は二百万円以下の罰金に処する。
児童買春の罪
18歳未満の人に対してお金を渡すのと引き換えに性交渉またはそれに近い行為をした者には、児童買春禁止法上の児童買春の罪が成立します。
ひととき融資の場合も、たとえ返済の約束をしたとしても、金銭の交付と引き換えに性交渉をした以上は、借りた側の女性が18歳未満であれば児童買春の罪が成立する可能性が高いといえます。
刑罰は、「5年以下の懲役または300万円以下の罰金」です。
第四条 児童買春をした者は、五年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。
ひととき融資の被害に遭ったときの対処法
ひととき融資に関わってしまった場合は、被害を最小限に抑えることが重要です。そのためには、以下のように対処することをおすすめします。
申し込みをしただけの場合
個人間融資の投稿主に対して申し込みのメッセージを送信し、やりとりが始まった時点で怪しいと気付くこともあるでしょう。
この段階であれば、相手との連絡を絶つだけで足ります。相手が「申し込んだ以上は契約手続きを進める義務がある」などと迫ってくることもありますが、無視して構いません。
申し込みだけで契約は成立していませんし、仮に合意したとしても、ひととき融資の契約は公序良俗違反として無効です。
SNSやLINEで相手をブロックするなどして、連絡を絶ちましょう。
顔写真や裸の写真を送ってしまった場合
顔写真や裸の写真を送信してしまった場合は、相手を無視すると実際に写真をばらまかれてしまうおそれがあります。
かといって、個人で適切に対処することは事実上困難なので、すぐに警察や弁護士・司法書士に相談した方がよいでしょう。
警察は実害が生じていなければ動いてくれないことが多いですが、「写真をばらまくぞ」などと脅されている場合には脅迫罪で被害届を提出することが可能です。
弁護士・司法書士は相手に対して刑事告訴や慰謝料請求の警告を出した上で、法的に交渉してくれます。
被害を未然に防ぐためには、弁護士・司法書士に対応を依頼することが最も実効的な対処法となります。
お金を借りてしまった場合
既にお金を借りてしまった場合、返済義務はないので返済する必要はありません。しかし、返済を拒否すると裸の写真などをばらまかれるおそれがあるので、やはり弁護士・司法書士への依頼が重要となります。
ひととき融資を行う一般の男性も闇金業者も、弁護士・司法書士による刑事告訴や慰謝料請求などの法的措置をおそれているので、通常は弁護士・司法書士が対応することによって相手からの脅迫や要求が止まります。
借金の返済が苦しいときは債務整理を検討しよう
ひととき融資などの個人間融資の利用を考える方は、借金を抱えていて返済に窮していることがほとんどです。
そんなときは、たとえ少額の融資が受けられたとしても借金は減りませんので、債務整理で借金問題を解決することをおすすめします。
債務整理には主に任意整理・個人再生・自己破産という3種類の手続きがありますが、状況に合った手続きを選べば借金問題は解決できます。
ひととき融資や個人間融資に興味を持った方も、既にひととき融資に手を出してしまった方も、債務整理という合法的な手段で平穏な生活を取り戻すことを検討しましょう。
ひととき融資や借金問題で困ったときは弁護士・司法書士ヘ相談を
ひととき融資の問題に限らず、借金問題で困ったときには一人で抱え込まず、法律の専門家である弁護士・司法書士に相談することを強くおすすめします。
相談するだけでも、法的観点から最適な解決方法をアドバイスしてもらえます。
依頼すれば、ひととき融資の相手との交渉も、債務整理の複雑な手続きも、すべて弁護士・司法書士に任せることができます。
弁護士・司法書士は、平穏な生活を取り戻すための心強い味方となってくれるでしょう。
まとめ
ひととき融資の被害事例では、親身な個人間融資だと思って利用したのに体の関係を要求されて断れなかったというケースもあれば、「1度だけ体の関係を持てばよい」と思っていたのに何度も迫られたというケースもあります。
いずれにしても、ひととき融資に関わると相手に弱みを握られてしまい、金銭的にも肉体的にも、場合によっては社会的にも深刻な被害を受ける可能性が極めて高いといえます。
決してひととき融資は利用しないようにしましょう。もし、ひととき融資に関わってしまった場合は、早急に弁護士・司法書士にご相談ください。