Human rights violations

ネット人権侵害(誹謗中傷)の被害者増加は、ネット社会と言われる現代の大きな社会問題として取り上げられています。スマホやノートパソコンで外出先でもすぐに書き込みができる今の時代、匿名であれば何でもできるというモラルのない人間が少なからず存在することも事実です。

不幸にもネット人権侵害の被害に遭ったときは、ネット上の書き込みを削除したり、法的手段に出たりして、いち早く平穏な日常を取り戻さなくてはいけません。ここでは、ネット人権侵害を受けたときの「書き込み削除」と「法的手段」について解説していきます。

そもそも人権侵害とは?

人権侵害の人権とは、すべての人間が生まれながらに持っている権利のことで、日本の法律では最高の価値基準とされています。

人権侵害とは、すべての人が持つ自由で平等、かつ幸せに生きる権利を無視して個人の尊重を揺るがす行為のことを意味します。人権侵害には、差別や虐待、公権力による侵害など多くの種類がありますが、インターネットやマスメディア等を通じた侵害がネット人権侵害に該当します。

ネット人権侵害とひとことで言っても多くの種類があり、「誹謗中傷」「プライバシー侵害」「名誉棄損」「侮辱」「偽計業務妨害」などが主なケースとしてあげられます。ネット人権侵害は刑法のみならず民事的な責任も問われることになります。

ネット人権侵害の用語とその意味について解説します。

誹謗中傷

誹謗とは、一般的に「相手をそしる(悪く言う・非難する)こと」という意味があります。中傷にも誹謗と同じような意味合いがありますが、「事実ではなく根拠のない言いがかり」という意味です。

つまり、誹謗中傷とは、根拠のないウソで人の名誉を傷つけることです。

プライバシー侵害

プライバシー侵害は、「私生活上の事項をみだりに公開しない法的な補償と権利である」と規定さられた憲法第13条を根拠とする新しい権利です。プライバシー侵害とはこの権利をおかして損害を与えることを意味します。

名誉毀損

名誉毀損とは、他人の品性、徳行、名声、信用などの社会的評価を毀損し、名誉を傷つけた場合に名誉毀損罪が成立します。ネット上の書き込みは、「事実の有無にかかわらず成立する」可能性があります。名誉毀損罪は刑法230条に規定されています。

侮辱

ネット人権侵害における侮辱とは、刑法第231条における「事実を摘示(てきし)しなくても、公然と人を侮辱した者」と定められる侮辱罪です。簡単に説明すると、事実を示さないで公然と人を軽蔑(けいべつ)することは侮辱罪という犯罪になるということです。

偽計業務妨害(ぎけいぎょうむぼうがい)

偽計業務妨害とは、「虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者」と憲法第233条に規定されています。

虚偽の風説を流布とは、虚偽の噂を不特定多数の者に伝える行為、偽計とは人をだましたり誘惑したりする行為、あるいは錯覚や知らないことを利用する行為という意味です。

ネット人権侵害の被害例

法務省の調べによると、ネット上の人権侵害は4年連続で過去最多となる1,900件もの被害が出ています。ネット人権侵害が原因で多大なる被害をこうむった例を紹介すると、昨年(2017年)テレビや新聞などで大きく取り上げられた事件が挙げられます。

神奈川県大井町の東名高速道路で2017年6月に、ワゴン車の夫婦があおり運転の被害から追突事故で死亡したケースです。この事件とは全く無関係の北九州市の建設工業社長の石橋さんが、ツイッターやネット掲示板(5ちゃんねる)で「容疑者の父」というデマが拡散されました。ネット上に会社の電話番号や自宅の住所まで拡散されたことにより、迷惑電話や脅迫電話が休む間もなく鳴り響き、会社は休業を余儀なくされました。業務上の大きな損失とともに、ご本人も精神面に大きなダメージを受けた被害例です。

これはネット人権侵害のほんの1例でしかありません。ネット人権侵害は数多くの被害者が存在し、様々な被害例があります。その一部をご紹介します。

親戚が逮捕されて内定が取り消された

就職活動中に何社からか内定が出たものの、同時期に親戚が金融関係の事件で逮捕され、全くの無関係の自分まで周囲の人から疑惑の目を向けられ、LINEやツイッターに中傷の書き込みをされた為に、すべての会社から内定を取り消されてしまった。

同姓同名というだけで中傷内容が拡散された

女性マンションに忍び込んで住居侵入の疑いで逮捕された犯人が偶然にも自分と同姓同名だったことが原因で、何者かによって犯人扱いされ、5ちゃんねるに顔写真が公開された。さらに、中傷内容がまとめブログで拡散されてしまった。

5ちゃんねるで中傷されて結婚破棄となった

5ちゃんねるの趣味一般のカテゴリーで、僕の女を寝取ったなどと書き込まれたうえに自分の顔写真を張り付けられて、中傷がはじまってから同じ5ちゃんねるを見ている仲間と会っても見る目が冷たく誘われることもなくなった。

さらに、翌年に結婚予定だったにもかかわらず、婚約者の両親が私の名前で検索してしまい、そのひどい内容を信じたことから、その結果、婚約破棄となった。

ネットの書き込みは削除しないと情報は拡散する

不特定多数の人が好き勝手に言い合える、5ちゃんねる、まとめサイト、LINE、ツイッターなどのネットの書き込みは放っておくとどんどん拡散され、被害者に多大なる精神的苦痛や実生活上の不利益を与えるものがあります。

ネット人権侵害を受けても、絶対に泣き寝入りしてはいけません。悲しい結末を招く前に、書き込み削除や法的手段という方法で、悪いことはしていないことを証明し、大きな信用を勝ち取ることが大切です。

人権侵害で削除できるケースとは

人権侵害でネット上の書き込みを削除してもらうために必要なポイントは、「自分のことを言っていると証明できること」「自分の権利が侵害されていると明確に判断できること」の2点です。

もちろん、自分のことを言っているとは思えないとサイト運営者に判断されたら削除対象とはなりません。書き込みを削除するためには各サイトに対して削除申請を行うことになりますが、5ちゃんねる、LINE、ツイッター、ブログ、ユーチューブ、爆砕、転職会議など、人権侵害されているサイト毎に削除申請方法が異なります。

特にネット人権侵害の被害者が最も多いと言われている5ちゃんねるに関しては、内紛によって「5ch.net(フィリピン法人)」「5ch.sc(シンガポール法人)」の2つに分裂しており、5ちゃんねるをコピーしている「ミラーサイト」や記事を抜粋している「まとめサイト」など細かく分類すると多くの種類があります。このため5ちゃんねるへの削除申請に関しては2ヵ所以上になる可能性が高いです。

基本的にどのサイトに削除申請する場合でも、削除対象となるには、次に該当しなくてはいけません。

1.本人と特定できる情報
2.電話番号、メールアドレスなどの個人情報
3.明らかに事実と反する書き込み

例として、ツイッターのルールでは「2」の電話番号やメールアドレスなどの個人情報や機密情報を投稿することを禁止されています。他にも、サイトによってはスレッド全体を削除してもらえるなど、それぞれのサイトに掲載や削除に関する様々なルールが設けられています。

人権侵害であっても削除できないケース

人権侵害であると思っても削除されないケースもあります。LINEを例とすると、友達に単なる悪口(ブス、バカなど)を書かれた又は特定性が曖昧などという被害相談が多くありますが、LINEに関しては1対1あるいはグループ内のメンバーでのやり取りとなりますので、「公然」での名誉毀損と認められることが難しく、たとえ削除申請を行っても削除できないケースが多くあります。

さらに、削除申請には、上記で示した「削除理由を裏付ける資料」と「本人確認のための資料」が必要になり、法的根拠のある削除依頼のみしか受け付けていないサイトも多くあります。単に人権侵害なので削除して欲しいという理由だけでは削除されないのが実情です。

損害賠償、法的手段を取るためには

ネット人権侵害は匿名性の高さが被害を拡大する主な原因となっています。このため、書き込んだ相手がわからないことがほとんどですが、書き込んだ相手を突き止める方法に「プロバイダ開示請求」というものがあります。

プロバイダ開示請求とは、ネット人権侵害の被害を受けた被害者は、平成14年5月27日に施行された「プロバイダ責任制限法(正式名称:特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律)」によって、インターネットへの接続サービスを提供するプロバイダに対して書き込みを削除するよう請求する「発信防止措置」です。

プロバイダ責任制限法では、サイト運営者に対して書き込んだ相手の情報を開示するよう請求する「発信者情報開示請求」できる権利が認められています。そして相手が特定できたら損害賠償請求をおこない、示談又は訴訟によって今まで受けた精神的苦痛や不利益等に対する慰謝料を支払ってもらうことが大切です。

ネット人権侵害に対する法的手段を取るためには、削除業者、弁護士に相談することから始まります。削除業者は、サイトの削除申請サポートをおこなったり「逆SEO」という手法を使い、人権侵害や風評などが記載されているページの検索順位を下げたりすることができます。

ネット人権侵害により苦しんでいることを1日でも早く解決したいという人は、依頼するかどうかはさておき、まずはネット誹謗中傷の専門家に相談することをお勧めします。必ず良いアドバイスを受けることができるでしょう。