誹謗中傷 損害賠償金

もしもネットに自分の誹謗中傷を書き込まれたらまず驚くと思います。そして次第に怒りや不安など様々な感情が湧きあがってくるはずです。当然ながら書き込みを削除するとともに書き込んだ相手が誰なのか突き止めたくなるのではないでしょうか。

さらに損害賠償金を支払ってもらうそのために法的手続きも検討すると思います。この記事では、権利侵害や誹謗中傷を書き込まれた時の「損害賠償金の請求ができるのか?」、「出来るとしたらどんな方法で行えばよいのか?」という問題について事例を交え解説したいと思います。

誹謗中傷による賠償金の支払い、その法的根拠とは

誹謗中傷を受け、相手に賠償金を支払わせることができる条件は「名誉棄損」および「権利侵害」されたかどうかです。

掲示板などであることないこと書かれて、仕事を失ったり、客足が遠のいたりといった被害を受けていることを裁判所に申し立て、それを裁判所に「名誉毀損」と認めてもらう必要があります。ちなみに誹謗中傷による名誉棄損は民法上の不法行為(民法709条)にあたります。あなたが受けた名誉棄損を「不法行為であり明らかな権利侵害をこうむった」と裁判所が認めれば、相手に慰謝料や損害賠償義務が生じます。

「名誉」に関する理解が重要

そもそも”名誉”というのは、その人の人格とか信用など、「社会的に評価」されるものをひっくるめて表現した言葉です。
誹謗中傷による賠償金支払いにおいては

1.誹謗中傷を受け
2.名誉を傷つけられ
3.社会的な評価が悪くなり
4.実害を受けた
この4つが成立すれば民事上の不法行為が成立します。

不法行為を行った場合、慰謝料や損害賠償義務が発生するので、被害を受けた人は加害者を見つけ次第、堂々と訴えることができるわけです。ちなみに名誉棄損で自分のプライドが傷つけられたとか、辱めを受けた、などという場合には、どうしても主観的な価値やメンタルへの影響にとどまってしまうため「名誉棄損」として認められません。

名誉棄損とはあくまで第三者が誹謗中傷に関する情報を見て、あなたのことをマイナスの人間だ、最低の会社だ、として評価した場合に限ります。商品レビューや飲食店の評価などの意見や感想などは、いくら商品が使えない、料理がマズイ、といったことを書き込んでも名誉棄損には当たりません。なぜか?簡単に言うと評価の対象が人ではないからです。人※でなければ”名誉”という概念が成立しません。
※会社は法人なので該当します

誹謗中傷による損失とその補てん

ある日突然誹謗中傷され、個人や会社の名誉を傷つけられたとき、時に甚大な影響を個人や会社にもたらすことがあります。たとえば逮捕歴や不倫した過去、懲戒処分や行政処分など、他人には知られたくない過去(不名誉な事実)を掲示板にさらされた場合、不特定多数の人がそれを知るわけですが、その書き込みが原因で会社に就職できない、やくざ者だと思われて部屋も借りられない、飲食店から客足が遠のくなど、生活するうえで、あるいはお金を稼いでいくうえで大きな不利益となるケースもあります。

もし誹謗中傷されず、過去にまつわる事柄が知られていなければ、内定をもらった会社に入社して収入を得られていたかも知れませんし、再婚して幸せな家庭を築いていたかもしれません。またそれまでと変わらずお客さんが集まり、お店が繁盛していたかもしれないのです。

誹謗中傷によってそれらの機会が奪われることは、得られたかもしれないお金や幸せが奪われたということです。このように誹謗中傷によって発生した不利益は、すべて経済的な損失につながっているため、その損失の原因を作った人を訴え、賠償金を請求できると言う法的ロジックになっています。

名誉棄損の事例

ではどんなケースが名誉棄損=不法行為として認められるのでしょうか。名誉棄損による慰謝料請求での判例はいくつかありますが、たとえば昭和59年に仙台地裁で行われた判決では、主婦3名による被害者の近所、職場における悪口によって、被害者が会社を退職、家族とともに持ち家を処分し、転居せざるを得なかった事案に対し、「井戸端会議の範疇を越えている」とし、主婦それぞれに20万円ずつの支払いを命じたものがあります。

下記は当社に実際にあった相談ですが、これらは名誉棄損に当たり権利侵害されていますので賠償金を請求できる可能性があります。

お店や従業員に対する名誉毀損の書き込み

Aさん 職業:ウエイトレス(キャバクラ勤務)
とある掲示板に本名を書かれ、容姿や店内での接客の様子、また事実無根の悪意ある書き込みをされてしまい、営業妨害を受けている。お店にも悪い評判が立たないか心配…

ウソの不倫(浮気)についての書き込みで名誉毀損を受けている

Bさん 職業:主婦
掲示板にウソの不倫書きこみされて仕事をクビになりそうになって困っている。掲示板の書き込みを削除したいが依頼しても対応してくれない。もし仕事を失うなどすれば弁護士に相談しようと思っている…

ライバル店から書き込みされて営業妨害を受けている

Cさん 職業:自営業
接骨院を経営しているが、競合店の関係者と思われる人物から、身に覚えのない悪意ある書き込みをされている。書き込みをされて以降は集客が伸びず悩んでいる…

損害賠償請求の方法

ここからは誹謗中傷されて相手に対して損害賠償を請求したいときどうすればよいのかを説明していきます。

【損害賠償請求をして賠償金を相手に払わせたい場合】
1.名誉棄損の証拠集め
2.誹謗中傷の発信者の特定
3.裁判所への申し立て
というのが大まかな流れになります。

1の証拠集めは、不特定多数の人が見る場(掲示板)で虚位の書き込みをして、名誉を傷つけられていることを証明するものでなくてはなりません。

・◯◯は高校生の時、◯◯市でケンカの末殺害事件をおこし懲役刑を受けた
・焼肉店「◯◯」のオーナーは◯◯で過去に、食中毒で営業停止処分を受けた
・◯◯は会社の同僚の◯◯子と不倫関係にある

といったものが名誉棄損に当たります。

こうした誹謗中傷の事実を押さえつつ、次に行うべきは発信者の特定です。発信者の特定は掲示板への書き込みであれば、掲示板側にIPアドレス情報の開示を求める方法があります。

その際に重要なのは、誹謗中傷の書き込みと実害の因果関係が明確であることです。

横領や脱税、犯行計画など犯罪につながるような投稿、住所や電話番号など個人情報の書き込み、不倫をしていることをバラされて、慰謝料請求などの実害に及ぶ可能性があるなど、いわゆる切羽詰まった状況になる可能性が高いことが情報開示や書き込みの削除に関わってきます。

発信者を特定したら、証拠を持って裁判所に損害賠償請求の申し立てを行います。弁護士に相談すればスムーズに行きますが、どうしても費用※が掛かってくるため、自分で行うこともできます。
※名誉毀損における慰謝料は、通常は多くても100万円程度と言われています。そのうちの1割程度が弁護士報酬です。

刑事事件として扱って欲しい場合

誹謗中傷による名誉棄損は、刑法上「名誉棄損罪」として230条に定められています。懲役もしくは禁錮3年以下、または罰金50万円以下という刑罰のある犯罪行為となります。刑法に訴えて相手を処罰してもらいたい場合、警察署、検察庁に告訴します。その際に名誉棄損されたことがわかる資料を持っていく必要がありますので、証拠集めは事前に行う必要があります。

ちなみに名誉棄損罪で告訴する場合、容疑者を知った日か6か月以内と期間が定められていますので、ご注意ください。

まとめ

これまで誹謗中傷による損害賠償についてお話ししてきました。今回は被害者の目線でしたが、掲示板などを利用し、書き込みを行えば時に加害者になる場合もあります。もし悪意ある書き込みに対し、犯人を当てずっぽで特定して、その人物に関する書き込みを行ったら実はその人が犯人ではなかった…なんてことがあるかもしれません。今度は逆に自分が名誉棄損で訴えられてしまうかもしれないのです。

被害者・加害者いずれにしても誹謗中傷対策は専門家のアドバイスを受けて慎重に対応すべきでしょう。